思い出
川沿いの道を歩く。今時、野バラ、アザミ、クローバーなどの可憐な花たちが心を和ませてくれる。ある日雑木の中に「サルカケの葉」を見つけた。淡い思い出に顔がゆるんだ。 遠い昔、幼稚園児の頃の息子が、興奮気味に「お母さん! 団子の葉っぱ見つけたよ」とカバン一杯に詰めたサルカケの葉を満面の笑みで見せた。...
View Article柴犬ゲンちゃん
「おはよ」「やめ」「またね」。朝昼晩決まって声を掛ける私を、がんぜないつぶらな瞳の彼(彼女)が見つめる。形のよい三角形の耳と顔の真ん中の真っ黒いだんご鼻。胸のあたりには柔らかそうな毛がふわふわと生え「お座り」の正しきポーズ。そう、昨年のカレンダーから切り取った柴犬のゲンちゃん、子犬である。大のおとながトイレに貼ったワンちゃんの写真に話しかけるのかって、自分でもびっくり!...
View Article目覚まし
ドスッ。腹に重みを感じて目を開ける。目が開いたのを確認すると、腹から飛び降り部屋から出て行く。時計は6時半を指している。 「まだ早いよ」と再び目を閉じる。するとペタペタと足音が近づいてきて、私の頭にパンチ。しばらく知らんぷりを決め込んでみるが肉球パンチは続く。...
View Article着信にドキッ
入所の義母や実家の母からの着信音に「何か?」とドキッとする。 膝を骨折し2ヶ月入院した義母は、認知症がひどくなり退院後施設に入所した。幻覚が特徴の認知症で、義母は夕方になるとソワソワしだす。「男の人が襲ってくる」と言い施設の職員では対応しきれず、落ち着くまで夫が付き添う事になった。 同時に実家の母は物忘れが多くなり、電話してもすぐ「声が聞きたかった」と同じ話をして心配が募る。...
View Articleアマリリス赤く
鉢植え、直植えのアマリリスが赤く咲いている。あまりの堂々たる咲きっぷりに、生涯学習でかじった俳句でもひねってみようかという気になった。まずはお手本をと、ネットで検索。 「向きむきの何れ正面アマリリス」稲畑汀子 「アマリリス四方に向くも素っ気なし」石田嘉江 私と同じ思いを持った俳人のいることをうれしく思った。...
View Articleゴメンナサイ
令和元年5月、姶良市加音ホールの加治木高校吹奏楽部定演。行進曲「春」に始まり、アンコール「桜島」まで、夢の時間。顧問指導力はもとより、生徒たちの才能と若さと努力に、ただ驚くのみである。...
View Articleバースデー
♪ハッピーバースデートゥミー。ハッピーバースデートゥミー。ハッピーバースデーディアねえちゃん。ハッピーバースデートゥミー。 5月、体調は〝快晴〟ではないけれどやっとこ87歳。遠くに暮らす弟妹も年を重ねたけれど6人弟妹の長女の私はいくつになってもねえちゃんです。 戦争中、母と力を合わせて生きてきた日々は、ねえちゃんより母ちゃん代理でした。...
View Article旅の中で
いつもとは違う朝の気配の中、ふと目が覚めた。そうか……ここは北海道。 ほとんで遠出をしない私を見かねて、息子が連れて来てくれた。遠いから行くことは無理だろうと思っていた北の大地の歴史や自然の探索、食事など満喫させてもらったことに感謝しつつ亡き母のことを思った。...
View Articleはがき随筆5月度
はがき随筆の5月度月間賞は次の皆さんでした。(敬称略) 【月間賞】25日「朝は山姥」永井ミツ子=宮崎県日南市 【佳作】13日「さとうさんは何処」露木恵美子=宮崎県延岡市 ▽8日「仰げば尊し」野崎正昭=鹿児島市 ▽16日「境界の線」北窓和代=熊本県阿蘇市 月間賞に永井さん(宮崎) 佳作は露木さん(宮崎)、 野崎さん(鹿児島)、 北窓さん(熊本)...
View Article巣立ち
珍しい。地面に降り、とっとと歩く2羽の鳥。よくみると1匹は極小の綿毛。まん丸愛らしい巣立ちの雛。一昨年も落ちていた雛はあれも親鳥が近くにいたのだろう。親鳥が飛び立つと万年青の葉陰にさっと隠れた。 家の軒に巣はあるのだが不思議に見つけられない。きっと生きる場所は厳重の守秘。今もカラスの影が地面を横切っていった。営巣は難しいことなのだ。...
View Article平成最後の満月
夕げを終え、久しぶりにベランダへ出た。 心地よい川風に当たりながら店を仰ぐと、星空が月明かりに消されていた。この日の月が、平成最後の満月だというのを耳にしていた。丸い、きれいなお月さまをイメージしながら、幾度となく見直したが、5年前に「黄斑変性症」が再発し、上弦、下弦の様に歪んで見える。 目は心の窓、盆のような月を思い浮かべ心が痛む。この日の満月を、忘れな草の1㌻書き止めておこう。...
View Articleちょっと変?
「お母さんは変わっている」娘から言われた数日後――。 我が家の水槽にとうとう一匹だけになってしまったメダカ。「メダシゲンチャン」。呼びかけると彼(雄だと決めつけている)は向きを変えた。硝子越しの小さな黒眼と見つめ合う。つと、肴が口を開いた。あっ、笑った。すぐに夫と娘に告げたが、2人は信じない。今度は夫が「お前は変わっている」と。...
View Article賞味期限の心配り
ドライブがてら立ち寄った菊池市の観光施設で、自宅用の土産に地元の銘菓を買った。包装しながらレジの女性が「賞味期限は19日になっていますけれど、よろしいでしょうか」と尋ねてくる。「今夜か明日には食べるから大丈夫」。そう答えると「ありがとうございます」と釣り銭とともに手渡してくれた。...
View Articleシャッター音
「パシャ」。頭上には、おいしそうなフワフワ、モコモコの白い綿菓子が浮かんでいる。BGMは鳥のさえずり。<あー、お昼は何を食べようかなぁ>。とりとめない事を考えながら、いつもの道を歩くのが至福のひとときなのだ。...
View Article木陰
市民の森を散策中、行き交った人が私の名前を呼んでいる。 びっくりして振り返ると、20年も前に知り合った男性で、相変わらず背が高い。よく覚えていたものだ。「お元気そうですね」と言うと「おかげで何とか」との返事。「あんたも元気で」と問われて「おかげさまで」と、木陰で答えを返す。 森には樹木の陰があり、熱い日は木陰で休むとほっとする。森は何も人間を休ませるために木陰を作っているのではない。...
View Article手作りのネックレス
関東の次女が、古いネクタイと木のビーズを使って手作りしたネックレスを送ってきた。社交ダンスをしていた数年前までは装飾品を楽しんでいたが、外出があまりない今では、引き出しに眠ったまま。...
View Article