一服しようとカップを持つと左薬指のあたりがひりひりして痛い。浅漬けの唐辛子のせい?
指輪を抜くと赤くなっている。消毒して様子をみることに。
結婚して53年、しわしわの手をかざしてみる。太っていた頃、意見の相違から、こんなはずじゃなかったと、抜けない指輪をぐるぐる回した夜のことも今は懐かしく、くびれた薬指がいとおしい。痛みがやわらぎ、指が寂しいとつぶやいている。結婚指輪を戻し、子供からのプレゼントと旅先で求めた指輪も一緒にはめると三つのハートが余生のお守りになった。指も心も輝き、暮らしが潤っている。
鹿児島県薩摩川内市 田中由利子(77) 2019/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載