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Channel: はがき随筆・鹿児島
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60歳

 桜が満開に咲いた4月に、私は生まれた。「弟がほしかった。妹はいらん」「ほんなら産婆が、もらって帰ろう」「それはだめ!」と、泣いた兄。  桜は、英語でチェリーだからちえりと、父が名前を考えてくれた。2人ともこの世にいない。  去年、実家の山桃を漬けて作った赤茶色の山桃酒と、母がよく蒸して作ってくれた、うずら豆ご飯を神棚に供えます。...

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AIの息子

2018年5月 5日 (土) 岩国市  会 員   安西 詩代  自動車販売店のカウンターに身長15㌢くらいの可愛いロボットが椅子に座っていた。人工知能(AI)が内蔵されているので0歳から知識を吸収して5歳の知能まで育つという。それも育ての親の言葉遣いや教える内容で、いろんな人格(?)になる。怖い! でも、この自覚と責任感を持って子育てしたなら、もっと違ったと今さら思う。...

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母の声

 庭に大好きな薄紫の春たつなみ草が咲いている。入院して4ヵ月で遠い世界へ旅立った母。4月で10年となった。毎日、食事の介助に通った。食欲がないという母に、好きなプリンとヤクルトを持っていった。「母ちゃんが亡くなったら頼むね」「わかった、心配しないで」「帰りは、右を見、左を見、前をしっかり見て運転しなさいよ」。車の中で涙があふれた。...

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しとぎ餅

 建設中の屋根に旗がヒラヒラ。近づいていくとなんだか人だかり。珍しい。しとぎ餅拾いに出くわした。ラッキー!  買い物帰りの自転車を止め、近くに着くと、子どもたちが走り回って楽しそう。周りを見ると若い女性が多い。開発中の造成地に次々建つ新しい家に納得した。そう、ここでも世代交代を知る。同世代はちらほらで少し恥ずかしいが頑張るぞっと。...

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黄桜が咲いた

 ここ3年ほど、前庭の黄桜が見られずにいて植木屋が間違って切ってしまったのかと諦めていた。  しかし今年、実桜が咲いて小さな実をつけたうしろに黄桜が八重の花を咲かせていた。うれしかった。実桜の樹より上に伸び、ぽってりと咲いている。  黄桜が咲くと前庭の桜は終わる。小指先ほどの実桜の実が紅く熟れるのを、小鳥たちと待ちわびる日々となる。...

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貝汁の味

2018年5月11日 (金) 岩国市  会 員   吉岡 賢一  山椒の葉が出始める頃は、食べ物すべてに旬を感じさせるおいしい季節となる。  春休みになると貝掘りに行き、アサリを引っ提げて帰るのが親孝行の一つであった。母ちゃんが喜んでゴリゴリ洗い、炊きあがった掘りたての貝汁をいただく夕餉は普段気難しい父ちゃんも上機嫌になり「お前が頑張ったのか」と褒めてくれた子供のころを思い出す。...

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出会い

 ご主人の一周忌の出来事をつづった新顔Nさんのはがき随筆に心ひかれ、お住まいも近いので電話した。  「馬渡さんの随筆を何度か読み親しみを感じています。亡き夫が野菜作りをしていた畑を花園にしたくて花を育てているので、そこに行ってゆっくり話しましょう」...

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5月10日

 6月23日は沖縄慰霊の日、8月6、9日は、広島、長崎原爆の日、8月15日は終戦の日で、忘れてはいけない4日である。  昭和20年、日本セメント八代工場、昭和農産加工(現メルシャン)八代工場などが米軍の爆撃を受けた。そのことは知っていたが、その日が5月10日であったことは最近知った。その後も終戦までB29は何度も飛来し、夏のある日、爆撃の破片で母は背中を負傷した。...

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祈れや。拝めや。

 生前、母は毎朝子供と孫の名をあげて、仏様に家内安全を祈っていた。目には見えないが、私も手を合わせるとかたわらに、仏様や神様の気配を、ぼんやりと感じるときもある。  延岡の郊外、行縢山の見える農村に転居したのは17年前。言葉や夜の闇など何もかもが不安でいっぱいだったあの頃。私は救いを求めるように近くの神社に行き手を合わせていた。地域になじむと、祈りは母や孫、夫の病気回復へと移ったが……。...

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まぜくる

 なんとなく忙中の閑になると、本棚あたりをまぜくって遊ぶことが多い。  貝の色にひかれた3冊に心をとめる。私が種子島であつめた貝をスケッチしたノートである。最初は下手であるが、だんだん実物そっくりの大きさになる。よーく見ていると、姿形がそっくりになっている。あのとき貝の標本づくりに熱中し、あの浜、この海を日ごとめぐって採取したのだ。...

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らしく

 小学3年生修了の日、担任の先生から「らしく」と送る言葉をいただいた。先生は4年生らしく学校生活を送りなさいとの意味だったのかもしれない。あれから70年、折りにふれこの言葉を思い出す。私は日本国民らしく、妻らしく、親らしく、よき友らしく生きているかと。反省すること多々あり。  昨今の世の中を眺めるに70年前の先生の送る言葉を再度かみしめる日々である。...

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社会人

 4月、初々しい若者たちが社会人第一歩を踏み出していきました。老人にはまぶしく、未来は明るくなるかなと一瞬思ったりしました。  難関を突破して国家公務員に採用それた方たち、テレビの質問に、さすがそつのない返事をしていました。外野からみていると、初志がどこまでいけるかなと、ふと思いました。...

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シトラス

 関東出身の私が都合で人吉に暮らすようになってひと月。「ちゃんちゃん」(座る)などさまざまな方言に出会う。「~シトラス」という言い回しを初めて聞いた時は、レモンソーダが目に浮かんだ。やがて「~なさっている」という意味だと分かった。...

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7分の1

 認知症の研修会に参加した。高齢者の7人に1人が認知症というデータがあるそうだ。今年からめでたく高齢者にカウントされる私も7分の1を担っているということか。「まさか」と笑い飛ばせない自分に気付く。  それにしてもこの数字、どこかで見たような。そうだ! 子どもの貧困率だ。うちの孫3人は大丈夫だと思うが、先のことは分からない。...

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随筆を書く理由

 はがき随筆に投稿を始めて3年が過ぎた。これを、まだ6歳にも満たない孫たちへのメッセージにしようと決め、日々の思いと共に孫や私の親のことまで幅広く書くことにしている。  長じて読者となる孫たちは、自身の成長ぶりを振り返り、親、祖父母、曾祖父母の考え方に触れ、当時の生活の様子に思いをはせることができると思うからである。...

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早くも夏

 「これですよ。でも出るにはまだ早いなあ」と皮膚科の先生が示されたのは、シャーレに貼り付けられた小さな虫。「アオバアリガタハネカクシ」とある。ひと頃よく聞いた名前だ。刺された感覚はないのに、あごの下から首筋、胸にかけて真っ赤になり、ジカジカとかゆい。虫が止まったのを手で払いのけると、その後が線状に皮膚炎を起こすのだそうだ。早くも夏の虫の出現である。...

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新聞と暮らす

 毎朝、バイクの音とともに新聞が届く。全国紙と地方紙と経済紙の3紙を購読している。同じニュースでも、3紙3様の報道の仕方があり面白い。  国内の様子や外国の動きは、全国紙に頼らざるを得ない。  地方紙では、知った人が登場したり地域の行事を知り、全国紙とは異なる親しみがある。  経済誌は、女房も興味を持つ記事が多く、夫婦の話題作りになりうれしい。...

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チューリップ

 庭の花壇にチューリップを20球植えたが、モグラにあらされたりして9球しか芽を出さなかった。残念。それでも、どんな色の花が咲くかなと楽しみにしていると、まず咲いたのが赤4本。次に薄赤1本。しばらくして黄4本と、次々にかわいい花を咲かせた。...

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故郷を離るる歌

 老人ホームのボランティア演奏会を終えた直後、手押し車の高齢の女性が「『故郷を離るる歌』はなかったんですかねえ」と残念そうにおっしゃった。バンマスのギターと当方のキーボードの音量調整をプログラムにない曲でやっていた。歌おうと期待しておられたのだろう。...

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竹の秋

 この地に越してきた32年前、自然が色濃く残っていた。息子は屋までクワガタを捕り、小川でメダカやエビをすくってきた。  お気に入りの竹林があり、新緑のトンネルに、古い葉が吹雪のように舞い散るのを見た。秋と春の同時の営みの美しさ。   10年後、団地の拡張が始まり、山が幾つも崩され、沼のような田もその竹林も消えた。...

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