
2018年5月11日 (金)
岩国市 会 員 吉岡 賢一
山椒の葉が出始める頃は、食べ物すべてに旬を感じさせるおいしい季節となる。
春休みになると貝掘りに行き、アサリを引っ提げて帰るのが親孝行の一つであった。母ちゃんが喜んでゴリゴリ洗い、炊きあがった掘りたての貝汁をいただく夕餉は普段気難しい父ちゃんも上機嫌になり「お前が頑張ったのか」と褒めてくれた子供のころを思い出す。
そして今、食べ物の旬を忘れるほど季節を問わず豊富な食材が手に入る時代となった。でも山椒の葉が1枚浮かぶ貝汁には寄り添い支え合って暮らした家族のぬくもりを思い出させる味わいがある。
(2018.05.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)