六月の風
トウモロコシは鍋をかけてから取れと親に教わった。釜から立ち上がるあの香り。兄弟で仲良く食べた頃を思い出す。 ところが、ここ指宿は違うんだな。風呂道具を用意してから収穫するんだな?...
View Article6月の墓参
2015年7月 1日 (水) 岩国市 会員 吉岡 賢一 家族が増えるという喜びと期待に胸を膨らませた第2子の誕生。 予定日は7月半ばであった。 6月に入って間もなく「お腹が痛くなった」という妻を急遽病院に搬送。 深夜2時、体重900グラムの超未熟児は、歓喜の産声もなく、この世に生を受けてわずか30分という短い生涯であった。...
View Article小さく撮ってね
2015年7月 2日 (木) 山陽小野田市 会員 河村 仁美 「はい、これ」と主人が集合写真をもらってきた。 ウイークポイントのメタボ腹が前列の人で隠れているし、顔が小さいので写真ではすごくやせて見える。 私はといえば、身体は標準サイズだと思うが顔が大きい。身体を斜めにし小顔に見える努力はしているが、効果はなく写真では太って見える。...
View Articleプレゼント
スーッとリンクに姿が現れた途端に大歓声が上がった。テレビで見るよりすてきな本物の羽生結弦選手。いくつもの試練を乗り越え、ますます磨かれた演技はさすがにすばらしく、近くで見たので迫力も十分伝わった。 幕張メッセの膨大な数の観客席がぎっしりと埋まっていた。 5月24日生まれの孫に誕生日祝をしてあげたいので上京するからと息子に伝えたら「30日に来て」という返事が来た。...
View Article里芋植え
初夏、我が家では、里芋を畑に植えるのはもっぱら私で、調理はつまだ。煮物やみそ汁に入れて食べると里芋の味は格別。 前の年、畑の隅に残した親芋から、5月ごろ小芋が芽吹く。その子芋を1個ずつ切り離す。畑に肥料を施し、子芋を一列に植える。土に触れ、土の匂いをかげば、なんとなく気持ちが安らぐ。偽物ではない確かなものを感じる。台地は、里芋だけではなく私を育ててくれる。...
View Article大賞
九州・山口の毎日新聞地域面に掲載している投稿コーナー「はがき随筆」で、鹿屋市の森園愛吉さん(94)の作品「愛妻」が最高賞の大賞に選ばれ、このほど北九州市で表彰式があった。掲載総数は各県・地域合わせて年間7000編以上。採用されなかった作品を含めれば膨大な数に上る投稿の中で、昨年のナンバーワンに輝いた。 森園さんの作品は、26年前に病に倒れた妻への思いがテーマだ。再掲をお許しいただきたい。...
View Article梅雨と雷
ピカッ! と光ったと思ったらドカン! 「今のはどこちかに落ちたわね」とカミさんが言った途端に停電。「これで梅雨明けだね」と、関東で育った私はそのころの決まり文句が口を突いて出た。 「だからさあ、種子島は関東と違うって言ってるでしょ」とカミさん。つい先日、リハビリ室でもおなじことを言って「まだ明けませんよ」と言われたばかりなのだった。...
View Article祝辞
「自宅療養する病的な母と、青年は二人暮らしです。朝食を作り、母の昼食を準備して出勤します。仕事を終えて帰宅すると、母を入浴させて、夕食を作りながら洗濯をします。就寝前に1時間ほど、母の両足をマッサージします。この生活を青年は6年も続けました。往診に通われているT医師は、母親に誠心誠意尽くす青年にいたく感動されて、自分の医院で働く看護師を、彼に紹介されました。...
View Article告白
友人が熱を出して3日目、病院へ連れて行った。だいぶ悪化させたらしく高熱が下がらない。熱心な治療に「いい先生ね」と言う友人に「私も15年前から大好きよ」と答えた。 それは15年前、義母が1週間ほど入院したとき、途方にくれ母に付き添う私は、先生が病室の前を通られる一瞬に、温かいまなざしを感じたからである。...
View Article記憶の糸
2015年7月11日 (土) 岩国市 会 員 安西 詩代 最中の菓子箱を開け、おもむろに1個を取り出した姉は、蓋をしっかり閉めて横に置く。最中を一心に見つめモクモクと食べ始めた。私が「おいしい?」と聞くと小声で「おいしい」とうつむいたままうなずく。 自分が食べる前には必ず「どうぞ、おあがんなさい」とすすめる人だった。18歳も離れている姉だが、一途に食べる姿は、幼子のように可愛い。...
View Article紙風船
愛用のペンシルが見あたらず、机の引き出しを捜す。奥に折り畳んだ紙風船を見つけた。 少年の頃、行商の薬売りから宮下に紙風船をもらったことを思い出す。弟とポーンと打ち合って遊んだ。遊び飽きたら、紙風船を手でたたく。パーンと鳴り破れた。弟もまねしてパーンとならす。間髪を入れず、母にもったいないと叱られた。...
View Articleああ7月
カレンダーをめくった。7月だ。6月半ばから時に逆らわず、雨の中パイナップルセージがぼつぼつワインレッドの花をつけはじめた。14日は娘の誕生日。あの年も梅雨が永羽島崎の山々は雨きりがかかり続けた。...
View Article大山木
「泰山木(大山木)モクレン科の常緑高木、高さ10㍍以上になる。初夏枝先に強い芳香のある白い大輪の花が咲く」と辞書にある。この花を知る人は少ない。高い木の上で空に向かって咲くため、地上からはわかりにくい。...
View Articleネジバナ
母の祥月命日に墓参した折、水場付近でネジバナを見つけた。そぼ降る雨に、ピンクの花列も鮮やかに咲いている。辺りの風景を損ねない程度に摘んで帰った。 山野草図鑑によると「ラン科ネジバナ属の多年草、別名モジズリ」とある」小花をよく見ると、確かにランの花に煮て優雅である。...
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