負けられんよね
夜8時を過ぎた帰路は田舎道で真っ暗だ。対向車が通り過ぎざまにともしてゆく田んぼは、稲たちがゆれ、「お疲れさん」と手を振ってくれている。 「さあ帰ったらビールだあ」と気持ちは一直線になる。もちろん妻と二人の子供の顔をその前に思い浮かべている。ひとりで言い訳をしながら安全運転。...
View Articleはがき随筆9月度
はがき随筆9月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)月間賞に野崎さん(鹿児島)佳作は一木さん(鹿児島)、増永さん(熊本)、矢野さん(宮崎)【月間賞】18日「閉所恐怖症」野崎正昭=鹿児島市【佳作】▽4日「端っこ文化」一木法明=鹿児島県志布志市 ▽18日「じんぜん」増永陽=熊本市中央区 ▽25日「ポケットの中に」矢野博子=宮崎県日南市...
View Article幸せ者
母が逝って2年と4カ月。月命日にはジュースと造花一輪が墓前に、毎月欠かさず供えなれる。 1度や2度は誰でもできる。しかし、2年以上もお供えが続くと、誰だろうか、どんな方だろうか。きっと奇特で心優しい方だろうな。想像が果てしなく広がる。私はこの方を仏様と呼んで手を合わせている。...
View Article孫の手作り新聞
今春、孫娘は学業を終え、親元を遠く離れた地で就業した。新型コロナウイルスの感染拡大により、輪をかけて会いにくくなっているので「じいちゃん、ばあちゃん。元気ですか」と時に電話してきてくれる。 大概、LINE(ライン)を使い、顔を見ながらのビデオ通話。おかげで私ら老夫婦は、従前にない長電話をしている。...
View Article見習わなくちゃ
夜、部屋でゆっくりテレビを見始めると、きまって5歳の孫がじゃれてくる。 先日、部屋に置いてある私のフィットネスバイクに孫が乗ってこぎだした。座ってすると足が届かず、立ってからこぎ始めてびっくり。そのエネルギーについていけない。時計を見ながら長い針が10になるまですると言い、汗びっしょりかいて約40分やり遂げた。何度も「もういいが」と促すがやめなかった。...
View Article非常事態宣言続行中
新型コロナウイルスの緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除された。新規感染者の減少傾向や医療のひっぱく度改善を受けてのことだが、制限緩和で感染が再拡大するという不安もぬぐい切れない。 それはさておき、私自身非常事態続行中である。空気を吸っても増えてしまう私の体重。 体重計に期待を込めてそっと乗ってみる。間違いかもしれないともう一回測り直すが変わらない。息を吐ききってもダメ。...
View Articleフェルメールの絵
オランダの画家フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」のバックの壁面にキューピッドを描いた画中画が現れたという。 エックス線調査でその存在は以前から分かっていたが、作者自身が上塗りして隠したと考えられていた。色彩サンプルの分析の結果、彼の死後に上塗りされていたことが判明。除去作業で本来の絵がよみがえったということだ。...
View Article運命の別れ
以前、遠距離通勤をしていた頃、タクシーをよく利用した。やがて70歳前後の気さくな運転手さんと顔なじみになった。奥様の話やお客様の話など、毎回楽しい話をしてくださった。...
View Article有明海
有明海のアサリが取れなくなったとのニュースを聞き、父が有明海の潮干狩りに連れて行ってくれたことを思い出した。 ねらう獲物は干潟の巣穴に潜んでいる足長タコである。シャコ、アナゴ、タイラギなどもとった。アサリは帰りにサッと堀り、大きいのを選んで持ち帰るのが常であった。 父は獲物のとり方をわかりやすく教えてくれた。私は、父を見失わないようにしながら、広々とした干潟を歩き回り、獲物をとった。...
View Article父をしのんで
暑さが和らいで日々涼しくなってきた。昔から私は初秋が苦手である。毎年たまらなく物悲しく、人恋しくなる。 昨年12月、父が96歳でこの世を去った。母は既に亡く、寂しい今秋である。最近、長年音信不通だった従姉妹と文通が始まった。父が残した古い写真を送ったのがきっかけである。思い出を共有できるのは何ともうれしい。電話やメールもあるが、やはり2人とも手紙世代。近況報告などをして楽しんでいる。...
View Articleジャスミン再び
前回5月に咲いたニオイバンマツリが、9月に入りまた咲いた。東側は2階建てのアパートが建っているので朝日には恵まれていないが、西日はたっぷり浴びている。ガラス戸越しい眺めていると、時折流れる風に枝を揺すってにこやかに笑っているように見える。...
View Article母となった瞬間
宮崎県も新型コロナが増え、串間でも皆注意する日々。そんな中、娘が出産を迎えた。 お産に付き添ってあげたいが行けない、病院にも立ち入れないで八方塞がりだ。ただ待つのみのお産。入院が決まり、メールや電話で近況を知るのみの、やきもきとした日が過ぎた。...
View Articleキネマの神様
映画「キネマの神様」を見に行った。原田マハの小説を青年劇場が舞台化し昨年見たが、映画製作の方はコロナ禍で難航している様子と見聞きした。 山田洋次監督のオリジナル脚本により、主人公のゴウとテラシンというジジイ2人の関係性が分りやすくなっている。...
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