以前、遠距離通勤をしていた頃、タクシーをよく利用した。やがて70歳前後の気さくな運転手さんと顔なじみになった。奥様の話やお客様の話など、毎回楽しい話をしてくださった。 いつものようにお話を聞いていると、目的地の500㍍ほど手前で料金メーターが倒れていたいことに気付いた。慌てて運転手さんに告げると、おもむろにメーターを倒し「まあこういうこともありますよ」と言って、メーター通りの初乗り料金しか受け取らなかった。 退職日に呼んだタクシーの運転手さんがなんとこの方。「運命の出会い」ならぬ別れだった。 宮崎市 福島洋一(66) 2021.10.20 毎日新聞鹿児島版掲載
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