庭の野いちごが例年になく、白い花を沢山咲かせた。5月になって花が薄緑色の実を付け、まもなく赤く色づき始めた。瞬く間に実は育ち、太陽に映えてキラキラと真っ赤に輝いた。美しくもあり、食べごろを教えてくれてもいた。早朝、小鳥たちが次々とついばんでいく。元々、彼らが運んでくれたものだから、茂みの中に残った実をそっと摘みとり、お裾分けを頂く。リハビリに励む夫も庭に出て車椅子に座ったまま手を伸ばしている。突然の大病に襲われて1年半、こんな穏やかな初夏を迎えることなど思いもよらなかった。野いちごをおやつに添えよう。 熊本県菊陽町 有村貴代子(74) 2021/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載人
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