齢96歳、長寿に生きるのは高い雲の上にたたずんでいるかのよう。幼少期、祖母は小柄で色白、気品の人。針仕事に精を込めていた。縮緬の生地でちゃんちゃんこをこしらえた。手には星の数ほどしわが寄り、型紙なしの勘と知恵が働く。夏は祖母の額の汗が光にまぶしく、ときに手を休めて深呼吸。カエデのような手で汗を拭いてあげる。澄んだ目は潤み、しわだらけの顔から美しい笑みがこぼれた。「ありがとう」。出来上がったちゃんちゃんこの袖に手を通すと「べっぴんさんよ」と祖母が言う。変身したね。感無量。かわいいネ。ありがとう。
姶良市 堀美代子 2015/9/8 毎日新聞鹿児島版掲載
姶良市 堀美代子 2015/9/8 毎日新聞鹿児島版掲載