グランドスラム
車の運転中はラジオを聴いている。パーソナリティーの楽しいしゃべりの間に流れるコマーシャルにも耳を傾ける。TVCMと違って、言葉と音だけで商品をうまくアピールしていると「なるほど」と感心する。...
View Article忘れられた集落
84歳で一人暮らしの正月、テレビを相手にゆっくりと過ごしていると、ふと同じ境遇の同級生がいたのに気がついた。 「あいつ、正月どうしてるんだろう」。電話をしてみたが通じない。考えだすとますます気になって重い腰を上げた。...
View Articleヤブコウジ
裏の竹山にヤブコウジが密植して、今年も赤い実をつけた。1畳ほどの広さだ。背丈は20㌢くらいで、上の方に葉を4.5枚つけ、その下に少し垂れ下がった柄に小さい赤い実を3.4個つけて可憐だ。 そのうちの1本を折ろうとしたら、曲がった根までついてきた。しっかり根を張っているのだ。あまりにもいとおしいのでスケッチした。赤い実が輝いて美しい。...
View Article雨の駅伝の日に
もう20年くらい前のこと。前途ある若者が亡くなった。同じ事務所ではないが、来訪の度に外郭団体の私にも名前を呼んであいさつしてくれた。 葬儀の日は冷たい雨が降っていて、県下一周駅伝の2日目。加世田から伊集院に向かう私たちは交通規制に巻き込まれながらぎりぎりに駆けつけた。...
View Article人生の旅立ち
就職を考える頃「福岡の八幡製鉄所に行かんか」と父が言った。まめにいろいろと父なりに調べた末のことだったと思う。高校は畜産課で、商売がしたいとスーパー西友(肉関係)と決めて東京へ。父は「好きなことが一番」と送り出してくれた。 駅で見送りの時「3年はきばれよ」と。母は泣いたが、父は笑って手を振った。初めての帰郷は3年後だった。今なら飛行機で1.2時間、昔は「つばめ」で23時間、東京は遠かった。...
View Article天国からの出席者
2017年2月20日 (月) 岩国市 会 員 吉岡 賢一 50歳を迎えた節目に「人生の小休止」と題した中学時代の同窓会をおこなった。返信はがきに混じって、聞き慣れない女性名で一通の現金封筒が届いた。中には、満面の笑顔で乾杯ポーズのK君の写真と手紙、そして会費と同額の1万円が添えられていた。...
View Article今度は何色かな
2017年2月11日 (土) 岩国市 会 員 中村 美奈恵 高2の三男へのクリスマスプレゼントは水色の腹巻きだった。マフラー、手袋と候補はあったが「期末テスト中、おなかが痛くなった」と言っていたからだ。...
View Article神ってる
2017年2月16日 (木) 岩国市 会 員 林 治子 道路修理とかであちこち渋滞にぶつかり買い物に意外と時開かかかった。やっと帰り荷物を降ろしレシートを見ながらふとカードが無いのに気がついた。 買い物袋を逆さにして捜す。あそこかと思う心当たりもない。買い物はしたのだが、その...
View Article春立つの頃
2017年2月17日 (金) 岩国市 会 員 山下 治子 節分の日、私はいつも鬼の役だった。給食後、年少組の教室にお面をつけて進入。気づいた園児が悲鳴を上げて泣き出す。...
View Article蠟 梅
2017年2月18日 (土) 岩国市 会 員 角 智之 先般、趣味の会で満開の蠟梅の枝を数本飾ると、部屋は早春の雰囲気に包まれた。この花は梅とは別の種類だが、花弁は梅に似て蠟細工のような艶がある。 花も終わり庭で花殻を集めると雑草に混じり、たくさんの小苗が生えていた。...
View Article2人暮らし
「もうイライラする。アータにゃ自由などなかとバイ。みんな学校で勉強しとっとバイ」とおばあさんは、片足骨折で入院し宿題を嫌がる反抗的な小学4年のヤンチャな孫を息を殺した小声で叱っておられた。沈黙の後、申し訳なさそうに「ごめんね」と孫を抱きしめられていた。...
View Article山眠る
霧島神宮参りをして、ここから烏帽子岳の往復をしようとなり、冬の山を味わえると参加した。緑葉樹の森を過ぎ、突然現れた高原ではクヌギ、コナラの木々が葉を落として裸の様相。寒々とヒューヒューとした音が響いていた。しばらくして名も無き滝は少しの流れとツララが下がっており、まさしく酷寒の地を訪れたみたいだ。恥ずかしげに少し積もった山道の雪を踏みつつ、ようやく山頂である。...
View Article鳥たちの落とし物
野鳥が庭に落とした万両が自然に発芽し、いま赤く色づき、日ざしを浴び、まるで宝石のように光り輝いている。昨年は正月を待つことなくあっけなく鳥に食べられ寂しい思いだった。...
View Articleおみやげだよ
「ひいばあちゃんには何をあげようかな。そうだこれをあげる」 そう言って差し出したのは、お医者さんセット。注射器や体温計、薬、聴診器が入っている。「これは、おもちゃの注射器だからチクッとしても痛くないよ。早くよくなってね」と、にっこり笑う。...
View Article身だしなみ
おしゃれとは無縁の私に帰省の子らが、年を重ねるほど明るくきれいな服を着るようにとアドバイス。身だしなみに気をつけろということか。老いては子に従え! 起床と同時にパジャマからセーターに着替える。遠のいていた美容院へも足を運ぶ。白髪のままでも調髪をすると様になる不思議。以来毎朝鏡に向かうことにしている。 ある朝、ぬれ縁に毛繕いしている猫とふと目があった。「おう!...
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