
玄関の戸を開けるとすぐ目の前にはききょうの花たち……。母が元気だったころは季節ごとに植えたルピナス、矢車草、百日早、ひまわり、ききょうなどを咲かせては喜んでいた。そんな母が寝込んでしまったのは私が12歳の夏だ。そして母がやっと立って歩けるようになったのは6年後のこと。その6年の間、ききょうだけは私が目を離さずにずっと見守っていたんだ。
母が逝って20年、今年もききょうは咲いた。玄関先から木戸口までジグザグに植えており、右、左、右、左と花の姿を見て歩く。花のことばをしっかりと聞き取りながら……。
出水市 中島征士 2017/10/13 毎日新聞鹿児島版掲載