今から20年ほど前のことである。今は亡き兄と2人で長崎の瀬渡しで磯釣りを楽しんでいた。高さ6㍍ほどの岩場であった。釣り糸をたれてタバコを一服していた。ウキの揺れ動く眼下の海水が引いて底の岩が姿を現した。変な波の動きだなあと思った。その時である。山のような大波がこちらに向かって来ている。「逃げろ」と兄貴が叫んだ。磯に居た私は後ろの斜面を必死で登った。駆け登った足元を見ると、白い波の牙が岩場を砕く勢いで襲っていた。兄貴の叫びで命拾いをした。一発大波の怖さを肌で感じたイサキ釣りであった。
福岡市 小森開 2017/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載
福岡市 小森開 2017/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載