洗濯前にはポケットをひっくり返しているが、急いでいると忘れてしまう。そういうときに限って子供のほポケットには何かが忍んでいる。木の実や折り紙、友達からのプレゼント。それぞれに理由があり、物語があり、宝物である。 ひところ息子のポケットには石が詰め込まれていた。何の変哲もない路傍の石だったが、あれは一種の石文だったのかもしれない。まだ言葉もままならず、伝えるすべのなかった息子は、感じたことを小さな石に託したのかもしれない。腹立ち紛れにプランターに捨てた石たちを、今は懐かしく眺めている。
鹿児島市 堀之内泉 2016/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿児島市 堀之内泉 2016/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載