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Channel: はがき随筆・鹿児島
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古 希

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2016年4月 9日 (土)
   岩国市   会 員   安西詩代

 69歳の誕生日を迎えた。めいが届けてくれたお祝いの包みを開けると、高野山でもらってくれたお札だ。「開運厄除 古希 安西詩代」と書いてある。
 「あら、私はまだ69歳よ」
 「高野山では数え年でいくので、69歳でなく70歳。古希です」
 「古希」という字が、今まで自分の年齢をあまり意識してこなかった私の胸に、ぐさっと突き刺さった。それと同時に、古希を祝ってくれる人がいることに喜びを覚えた。
 嫁からは「老人らしくない元気なお母さん、おめでとう」という意味のメールが届いた。おばあちゃんを6回も連呼している。「おばあちゃんを連呼して、私に老人を自覚させようとしているのでしょうけど、その手にはのらない (笑)」と返信した。
 近年、髪染めが面倒になった。白髪にしようと、4カ月間、髪染めをしていない。まだらの髪は、会う人それぞれが話題にする。「まだ早いわよ」 「5歳は年をとって見える」・・・。
 しかし、私の頑固な性格を知っていて、何回も会う友だちは「案外、いいよ」と言ってくれるようになった。見慣れたためか、言っても無駄と思うためかは分からない。
 「古くまれ」な年齢から、喜寿、傘寿、米寿と続くが、さて私はどの辺りで、おいとまとなるだろうか。

     (2016.04.09 中国新聞「こだま」掲載岩国エッセイサロン)より転載

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