「出てくれるはずもない人の部屋で私のベルが鳴る」との歌詞がある。知人は、実際にそれを体験したという。大好きだった祖母。病で逝ったが、なぜかその家の黒電話はそのままになっていた。幼いころから可愛がってくれたばあちゃん。泣き虫の自分をいつも慰めて全てを受け入れてくれた笑顔。 彼は大学時代、寂しさが不意に襲ってくると、ついついダイヤルを回した。「畳の上のちゃぶ台が震えるだけで、誰も出るはずもないのにね」と語った後、急にうつむいて顔を隠し、目じりを指で拭った。優しい人柄の原点を知ったような気がした。 鹿児島県出水市 山下秀雄(52) 2021/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載人
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