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Channel: はがき随筆・鹿児島
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2個の時計

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 昔、我が家は小さい店を営んでいた。7人の大家族で朝昼晩に柱時計は必需品だった。振り子の横に家族の名が書いてあり、父が毎朝ネジを巻いていた。 ポンポンと響き、カチカチと刻む。休むことなく時を知らせる時計は、家族の歴史を見守ってくれた。そして春、夏、秋、冬、1年、10年と過ぎ去って行く。 腕時計は、父が外出の時だけ身につけていた。74歳で逝った時、病室の枕元でみとってくれた腕時計。私はそれを超える歳になった。今でも部屋の片隅に動かなくなった2個の古時計が置いてある。 宮崎市 藤田綾子(75) 2021/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載の

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