Quantcast
Channel: はがき随筆・鹿児島
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2762

渋抜き

$
0
0
2015年11月10日 (火)

岩国市  会 員   片山 清勝

今年も渋柿をもらった。皮を剥き、軒下にぶら下げ陰干しにして干し柿にする。この作業を始めると「熟すまで待つ」という祖母の渋抜きを思い出す。

木箱に、青く硬い柿を並べ、それをもみ殼で覆い隠し、蓋をしてそのままにしておく。年が明けると祖母は蓋を開ける。待ち遠しい一瞬だ。もみ殼を除くと、赤い熟し柿が姿を現す。

果肉のとろっとした口触り、その中に満ちていた甘さは今も覚えている。この技を受け継がなかったことを残念に思う。

10月から後期高齢者に。身についたいやな渋をどうして抜くか思案している。

  (2015.11.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2762

Trending Articles