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Channel: はがき随筆・鹿児島
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小さな生命

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 がん健診に行った。椅子に順々に座って待っていた。
 ふと足元を見ると、小さな黒い糸トンボが疲れたように床に横たわっていた。指で羽をそっとつまむと、かすかに足を動かした。
 「生きている」
 となりの人も
 「本当、生きていますね」
 そのまま外に出て、そっと離すと、トンボは羽をばたつかせて、静かに飛んでいった。
 小さな生命が救われた。がん健診も命を救う営みだ。よかった。よかった。
  出水市 畠中大喜 2015/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載

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