福岡の母の所へ行くと「延命治療は望まないから」と念を押される。遺影は用意したと言うので一緒に仏壇の下を開けた。
子供各々へ宛てた手紙もある。10年以上前に書かれたらしい。封はされていない。ふざけて声に出して読む。予想通り、世話になった、夫婦仲良くとある。妹のもほぼ同じ。兄の封筒はらずかに厚い。一瞬躊躇し、これは黙読した。厳しい時代もあったが、この地で続いてきた、感謝の気持ちを忘れるな、と。
あら、誤字がある。「お母さん、この字間違ってるよ」。すると不思議顔の母が「こんなの書いたのも忘れてた」。
宮崎県日南市 矢野博子(68) 2019/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載
子供各々へ宛てた手紙もある。10年以上前に書かれたらしい。封はされていない。ふざけて声に出して読む。予想通り、世話になった、夫婦仲良くとある。妹のもほぼ同じ。兄の封筒はらずかに厚い。一瞬躊躇し、これは黙読した。厳しい時代もあったが、この地で続いてきた、感謝の気持ちを忘れるな、と。
あら、誤字がある。「お母さん、この字間違ってるよ」。すると不思議顔の母が「こんなの書いたのも忘れてた」。
宮崎県日南市 矢野博子(68) 2019/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載