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Channel: はがき随筆・鹿児島
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長生きしましょうよ

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 近くの田んぼも黄金色に実り始めた。通りかかると年老いた男性が声を掛けてきた。「猪がすぐ横の林にすみ着き、小さな谷を越えて稲を荒らしにやって来る。倒れた稲をスズメが食べつくす。もう手におえない」。訴えずはおれない様子だ。
 腰を曲げて、働く奥さんの姿も長く見ない。「認知症が進み施設に預けた。農業経験もないのに良く働いてくれた」。涙を浮かべながら彼の話は続いた。
 私もこのところ猛暑に投げ出し加減だった。急に我に返った。「ぼちぼち、できるひどのことをやって長生きしましょうよ」。ほんのり笑顔で別れた。
  宮崎市 川畑昭子(74)2018/8/9 毎日新聞鹿児島版掲載

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