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Channel: はがき随筆・鹿児島
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慈雨

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 初めて空手の稽古に出た日、息子は泣いてばかりいた。お仕着せの胴着を嫌がり、親から離れず、最後はぐずぐずと眠った。次の稽古では初めて正座をし、お辞儀を覚えた。今では一丁前に先輩風を吹かせているが、四股を構え、丹田から声を出せるようになったのは年長になってからだ。暖かく見守ってくれた先生や兄弟弟子、父兄の存在なしに今の彼はなかったろう。
 息子を包んでくれているのは柔らかな慈雨だ。親の至らなさをいろんな手のひらが支えてくれる。どんな出会いも壁もきっと人生を沃野に変える恵みの雨となるだろう。
  鹿児島市 堀之内泉 2016/1/22 毎日新聞鹿児島版掲載

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